佐吉コレクション 三味線三昧
写真と文/七代目杵屋佐吉
世代を超えてめぐり逢えた名器
昭和13年 伊藤鉄之助作(旧「かどや」、現「三雅」)
私の祖父、四世佐吉の百人目の名取となった佐龍(さりょう)さんが、その記念にと祖父の見立てであつらえた三味線で、インド南部マドラス州で採れた五百年生の紅木を用い、高蒔絵などその時代の贅を尽くした名器である。
管理していた娘さんも亡くなり、その後平成7年の阪神淡路大震災の折、「白龍」の入った三味線箪笥が転倒しヒビが入ったが、桐箱に入っていた「白龍」は奇跡的に無傷だった。これを機に後々の「白龍」の安全を第一に考えた御家族の御希望により、三味線箪笥と共に佐吉家に託されることとなった。
御家族の三味線に対する愛情に敬意と感謝を忘れぬよう、現在は佐吉家の宝として大切にし、特別な記念の会の大事な演奏時のみに、舞台で使用し佐龍さんを偲んでいる。
「白龍」の名にふさわしく、勢いのあるみずみずしい音色である。
また佐龍さんは同時に黄楊(つげ)の延棹の稽古三味線百挺をあつらえ、先輩名取全員に贈呈したという逸話がある。これは四世佐吉に贈った一番目の黄楊三味線で、名はやはり「白龍」という。
四世佐吉書の「白龍」の文字が
金漆で施されている
四世佐吉書
見事な虎斑の橡(とち)
鳩胸に施された
鶴亀三番叟の高蒔絵
立体的な金漆
粋な江戸前の細棹
色漆で装飾された糸巻
凝った細工が施されている
先輩の100人の門弟に名披露目で
贈った黄楊の白龍
転軫(てんじん)には四世佐吉書の
「白龍」の文字
裏にはシリアルナンバーが
漆で書かれている
白龍の桐箱
桐箱の中
箱書
佐龍さんが使用していた
龍の文様の胴掛け
100人の門弟が三味線のお返しに、
佐龍さんに贈った
輪島塗の三味線箪笥
中は4段の棚と2杯の引き出し